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西表採集③

陽が暮れる


一昨年、オキマルを目撃した経験から、この時間に突入するのが良いと踏み、夕食もそこそこに山へ向かった


車内にはもはや夜採集定番となった「Das Engellandlied」が木霊する


「お元気で、愛する人よ
 お元気で、さようなら
 というのも我らは、そう、我らは
 マルバネを討ちに往く
 マルバネを!!」



着いてみれば、既に車が停まっている。中にはママチャリもある。一体、どれほどの強者たちが先行しているのだ……



今回、初心者で一人ということ、GPSもロクに配備していなかったため、登山道沿いを攻め、奥には入らないことを選択した。要はチキンゲーだった。まるで特攻精神に欠ける


しかし、闘志は充分燃え上がっていた。一年ぶりの南西諸島の夜の森。やることは決まっている



諸君、夜が来た
無敵の敗残兵諸君
最古参の新兵諸君
満願成就の夜が来た
採集の夜へようこそ!!




いつもの口上と共に林内へ突入する!!脳内で突撃喇叭が吹き鳴らされ、恐怖心を打ち砕く


aei






この刻を待っていた。待ち望んでいた。土を踏み締め、逸る鼓動とGPSアプリの無機質な音が響き渡る



一歩、また一歩。時には道脇に逸れて木を見ながら登っていく



a

おまえは呼んでいない





やがて目をつけていた木に着く。いない……



初日だが、いなかったことに焦りを覚えた。なるべく安心しておきたいのに……



まぁ、仕方あるまい。今日は降りよう。まだ数日ある




そうして入口付近まで来たとき、ふと気になって少し脇に逸れた先の木をみた



下を見る……いない




上を見る……


e

これは紛らわしいやつ





そして、その近くに……


_





その光の中央に、小さいが、確かに紅の甲虫を認めたとき、一年ぶりに心臓が猛った


いた…いた……いた!!!!!!



そう呟きながら慌てて道に置いてきた長竿を採りに戻る。どうか、まだいてくれ!!!


彼は果たして、そこにいた。しかし、網ではこれは採れないかも知れない……登るしかない


慎重に、木に傷をつけないようにゆっくり登る。首が痛くなるくらい捻れば、すぐ目の前に……



落ちないように手を伸ばし、それを掴む!!



手中に収めたそれを潰さぬよう、木から落ちないようそろりそろりと地に降りた



bb






ふ、はは……初めて採ったぞ……



ドのつく小歯、こんな雑魚採って何だと言われるかも知れない


だが、これが、私が初めて手にしたマルバネ!!

俺の、俺だけの虫!!!!!!!




もう、満足してしまった。この日はこれで帰ることにした



帰りの車内、勝利の音楽が無限に鳴らされる




bbb


百万石の酒と共に、乾杯



この日は安眠と相成ったのであった
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西表採集②(写真はなし)

上陸




一先ずレンタカーの手続きを終えたあと、宿へと急行する


これまで無理な採集を続けてきたわけであるが、昨年の徳之島で思ったことがある


それは、宿を取って布団で寝ると体力の消耗が抑えられ、翌日の採集のパフォーマンスが違うということである


特に今回、わたしは車にギャオスの頭マークをつけないといけないドライバーだったため余計に休みを取らねばならなかった。橋頭堡なしではノルマンディーに上陸できないのと同じである



そんなわけで初めての西表を、初めて一人で運転して採集に向かう


西表島らしい、ヤマネコ看板の脇から次々と懐かしい見た目の蝶や、黒くて大きなハチ…攻略目標であるシランオオベッコウバチが飛び交い、路上を舞う



秋なのに夏のような暑い陽射しが窓を通して肌に突き刺さり、窓を開放すれば都会のそれとは違う匂いの空気が通り抜けていく



目線を上に向ければ、コンクリートではなく、緑の深い山が荘厳に聳え立っている



嗚呼、私は現実を離れて……野心の夏と諦観の冬を越えて今此処に立っている!!




宿に着く。職場で鍛えたバック駐車を発揮して入庫すると、チェックイン。橋頭堡となる部屋に荷物を置いたら早々に山へ下見に向かう



今回は予め人に場所を訊いていた。人から教えて貰ったポイントで採るなんて……と以前はイキッていたものであるが、今はそうとも言っていられない。情報戦を制した者が勝利する。世は文明の科学戦




困りながらも何とか登山口に入り、突き進む。途中、採集者のオジサンと会ったので、これ幸いとばかり色々訊いた


人の良いオジサンは初心者ぼっちの私を気の毒に思ったのか、あれこれ教えてくださった。これが重大な結末に繋がるとは……




サクサクと下見を終える。時間も微妙なので宿へと戻り、休眠……決戦に備えて!!

西表採集①

昔、読んだ本がある



そこには「タテヅノマルバネクワガタの楽しい撮影」とあった



そのときは「なんて面白そうな採集なんだろう」と思ったが、どうにも「タテヅノマルバネクワガタ」にそこまでの魅力を見出せなかった




だが、4年前。害虫氏、I氏と向かった沖縄本島、初のマルバネクワガタとの邂逅。そして、石垣島での大敗



楽しかった。これは良いものだと思った。またやろう、そう思った




それから毎年、マルバネ探しに行っていた。だが、私は自分で運転して採集をしたことがない



なら、今年は私が運転して、私がマルバネを見付けよう。今度は、西表島で!!





そうして、単身西表へと向かった。




201811231231404a2.jpg

全フラッペン発動開始
デウス・ウキス・マキナ始動!!
目標、八重山諸島石垣島上空!!!




20181123123202eac.jpg



そんなわけで4年振りに降り立った



そこから港へ向かい、フェリーに乗り込む




船は出てゆく港の沖へ
愛しあの子のうち振るハンカチ




2018112312322135c.jpg



そうして見えてきた。初の西表島


灯だ!!八重山の灯だ!!!!




ここからどんな採集が始まるのだろう。遂にマルバネクワガタを手にすることが出来るのだろうか



ワクワクがとまらなかった……

序章

諸君、計画を続けよう。
採集のために。
次の採集のために。
次の次の採集のために。




曾て「採集」と書いて「せんそう」と読んでいた時期があった


虫採りをするために燃え上がっていた時期があった




しかし、そんな日々は終わりを告げ、南の島での採集には行くことがなくなった






虫採りとはなんなのか


私が「せんそう」と言っている間に、他の人はもっと多くの素晴らしい業績を上げていた


私のあの日々はなんだったのか。私にとって虫採りとは何なのか



私は、何なのか



そう考えることは止められず、気が付けば休日出勤の代休を利用して大型連休を作っていた。航空券を握り締めていた





向かえ、離島(いくさば)へ

あの日揚がった…

春に蚊を捕まえた




201810051949000cb.jpg





当時はオオクロヤブカと同定した





その後学ぶ機会があったのだが、標本を改めて見てみたらオオクロヤブカではなくトウゴウヤブカであると判明



20181005195645782.jpg





これが生きているとき。4本筋と白い触肢先端がみえる。これを筋なしと判断した当時は何を見ていたのだろうか




トウゴウヤブカのトウゴウとは「あの」トウゴウである。あの日揚がったZ旗



その由来故に存在を知ったあとは是非欲しいとおもっていたが、まさか既に手元にあるとは思わなかった






灯台下暗し。次はキンパラナガハシカでも探そう
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